SAKE DICTIONARY
日本酒用語辞典
全254語・読み方と一言定義つき
ラベルや商品説明に出てくる日本酒の言葉を、分類別に短くわかりやすく解説しています。 各用語のページには、その用語に該当する銘柄や関連する記事へのリンクも置いているので、 「意味を知る」から「実際に選ぶ」まで、そのままつながります。
GRADE
分類・特定名称
純米・吟醸・本醸造など、ラベルの肩書きを読み解く言葉。
- アル添酒あるてんしゅ醸造アルコールを加えた日本酒の通称。本醸造・吟醸・大吟醸などが該当し、香りを引き出し味を軽くする目的で加えられる。純米酒との対比で使う。
- カップ酒かっぷしゅガラスのカップに詰めて、蓋を開ければそのまま飲める日本酒。1964年に大関が発売した「ワンカップ」が元祖で、一合180mlが標準。
- 紙パック酒かみぱっくしゅ紙容器に詰めた日本酒。軽く割れず、光を通さないので劣化しにくい。普通酒や本醸造が中心だが、純米や大吟醸のパックも増えている。
- 生一本きいっぽん一つの蔵で造った純米酒だけに表示できる言葉。「混じりけのない」という意味で、自社醸造の純米酒である証。
- 級別制度きゅうべつせいど1992年まで続いた、日本酒を特級・一級・二級に分けて課税する制度。品質より税額の区分で、廃止後に特定名称酒の表示が主流になった。
- 吟醸酒ぎんじょうしゅ精米歩合60%以下の米を吟醸造りで仕込み、少量の醸造アルコールで香りと軽快さを引き出した日本酒。すっきり華やか。
- 合成清酒ごうせいせいしゅアルコールに糖類・酸味料・アミノ酸などを加え、清酒に似せて造った酒。米の使用量が少なく税率が低い。清酒とは別の品目。
- 三増酒さんぞうしゅ醪に醸造アルコールや糖類・酸味料を加えて量を約3倍に増やした酒。戦後の米不足で生まれ、2006年の法改正で清酒として認められなくなった。
- 純米吟醸じゅんまいぎんじょう精米歩合60%以下の米を低温でじっくり発酵させた純米酒。華やかな香りと米の旨味を両立した、現代の人気カテゴリ。
- 純米酒じゅんまいしゅ米・米麹・水だけで造った日本酒。醸造アルコールを使わず、米の旨味とコクが素直に出るタイプ。燗との相性も良い。
- 純米大吟醸じゅんまいだいぎんじょう精米歩合50%以下、米を半分以上磨いて造る純米酒の最高クラス。透明感のある味と華やかな香りで、贈り物の定番。
- 上撰・佳撰・特撰じょうせん大手蔵が普通酒などの格を示すのに使う呼び名。1992年に廃止された級別制度の特級・一級・二級を、各社が自主的に言い換えたもの。
- 清酒せいしゅ酒税法上の日本酒の正式な呼び名。米・米麹・水を発酵させて漉した、アルコール22度未満の酒。にごり酒も漉していれば清酒に含まれる。
- 大吟醸酒だいぎんじょうしゅ精米歩合50%以下+醸造アルコール少量添加で造る、香り高くキレの良い最上位クラス。鑑評会出品酒に多いスタイル。
- 低アルコール日本酒ていあるこーるにほんしゅアルコール度数を6〜13度程度に抑えた日本酒。発酵の途中で止めるか、加水して仕上げる。甘酸っぱく軽い飲み口で、日本酒の入口として人気。
- 糖質ゼロ・プリン体ゼロとうしつぜろ発酵を進めて糖を残さず、ろ過でプリン体を除いた日本酒。食品表示基準で100mlあたり糖質0.5g未満なら「ゼロ」と表示できる。
- 特定名称酒とくていめいしょうしゅ純米酒や吟醸酒など、原料と精米歩合の条件を満たした日本酒だけが名乗れる8種類の呼び名の総称。ラベル読みの出発点。
- 特別純米酒とくべつじゅんまいしゅ精米歩合60%以下、または特別な製法で造られた純米酒。「純米の旨さ」と「きれいさ」のバランスが良い実力派ゾーン。
- 特別本醸造酒とくべつほんじょうぞうしゅ精米歩合60%以下、または特別な製法で造られた本醸造酒。日常酒の気軽さに、ひと磨き分のきれいさが加わったタイプ。
- どぶろく発酵した醪を漉さずにそのまま飲む酒。米の粒が残り、甘酸っぱく濃厚。法律上は清酒ではなく「その他の醸造酒」で、自家醸造は禁止。
- 日本酒(地理的表示)にほんしゅ国産米を使い日本国内で醸造した清酒だけが「日本酒」と名乗れる制度。2015年に国税庁が指定した地理的表示(GI)で、海外産の「SAKE」と区別する。
- 普通酒ふつうしゅ特定名称の条件に当てはまらない、または名乗らない日本酒の総称。パック酒など日常の食卓を支える存在で、流通量は多い。
- 本醸造酒ほんじょうぞうしゅ精米歩合70%以下の米に少量の醸造アルコールを加えた、すっきり飲み飽きしない定番タイプ。燗酒との相性が抜群。
BREWING
製法・造り
生酛・火入れ・原酒など、造り方や仕上げ方を表す言葉。
- 赤酒あかざけ醪に木灰を加えて保存性を高めた、熊本の伝統的な酒。赤褐色で甘く、正月のお屠蘇や料理酒として使われる。火入れをしない「灰持酒」の代表。
- 秋あがりあきあがり冬に造った酒が夏を越して熟成し、秋に味が円熟してよくなること。この状態で出荷される酒がひやおろし。逆に味が落ちるのは「秋落ち」。
- あらばしり搾りはじめに、圧をかける前に自然に流れ出る最初の酒。やや濁りがあり、フレッシュで荒々しい。中取り・責めと続く搾りの三区分の最初。
- 遠心分離えんしんぶんり醪を高速で回転させ、遠心力で酒と酒粕を分ける搾り方。袋や圧力を使わないので雑味や布の匂いが出ず、袋吊りに近い透明感の酒になる。
- 踊りおどり三段仕込みで、初添えの翌日に何も加えず1日休ませること。酵母が十分に増えるのを待つ日で、この後に仲添え・留添えと続く。
- おりがらみ搾ったあとに沈む微細な滓(おり)をあえて絡めて瓶詰めした、うっすら霞むタイプの日本酒。にごり酒より軽やか。
- 滓引きおりびき搾った酒をタンクで静置し、底に沈んだ滓(細かい米や酵母のかす)を残して上澄みだけを移すこと。ろ過の前に行う基本の清澄工程。
- 粕歩合かすぶあい仕込んだ白米の重さに対する酒粕の重さの割合。高いほど米を溶かしきらずに搾った贅沢な造りで、吟醸酒は40〜50%を超えることもある。
- 活性にごり酒かっせいにごりざけ火入れをせず、酵母が生きたまま瓶詰めしたにごり酒。瓶内で発酵が続き炭酸ガスがたまるため、開栓時に噴き出すことがある。要冷蔵。
- 寒造りかんづくり冬の寒い時期に集中して酒を造ること。低温で雑菌が抑えられ、発酵がゆっくり進んで酒質が安定する。江戸時代に定着した日本酒の基本の造り方。
- 木桶仕込みきおけじこみ杉などの木桶で醪を仕込む伝統製法。桶に棲む微生物と木の風合いが複雑な味を生む。ホーロータンク普及で一度途絶えかけ、近年復活の動き。
- 貴醸酒きじょうしゅ仕込み水の一部を清酒に置き換えて醸す贅沢な日本酒。とろりと甘く濃厚で、デザート酒や食後酒として楽しまれる。
- 生酛きもと蔵に棲む天然の乳酸菌を取り込んで酒母を育てる伝統製法。手間は速醸の倍だが、複雑な旨味と燗映えする骨格が生まれる。
- 吟醸造りぎんじょうづくりよく磨いた米を低温で長期間発酵させる造り方。酵母にストレスをかけることで果実のような吟醸香が生まれる。手間と時間がかかる技術の粋。
- 原酒げんしゅ搾ったあとに加水調整をしていない日本酒。アルコール度数17〜20度前後と高めで、濃厚な飲みごたえが楽しめる。
- 限定吸水げんていきゅうすい浸漬の時間を秒単位で管理し、米の吸水率を狙った値に揃える技術。高精米の米は吸水が速いため、吟醸造りでは欠かせない。
- 麹室こうじむろ米麹を育てるための専用の部屋。室温30℃前後、湿度も高く保たれ、杉板張りの伝統的な造りが多い。蔵の中で最も清潔に保たれる場所。
- 古酒こしゅ長期間熟成させた日本酒。一般に3年以上が目安。琥珀色に色づき、ナッツやドライフルーツのような熟成香をまとう。
- 三段仕込みさんだんじこみ醪を初添え・仲添え・留添えの3回に分けて仕込む日本酒の基本技術。酵母の勢いを保ったまま量を増やし、雑菌を防ぐ。
- 四季醸造しきじょうぞう冷房設備を使い、季節を問わず一年中酒を造ること。年間を通して搾りたてを出荷でき、設備を効率よく使える。大手や一部の地酒蔵が採用。
- 雫酒しずくざけ醪を袋に入れて吊るし、圧力をかけず自然に滴る雫だけを集めた最上級の搾り方。鑑評会出品酒にも使われる贅沢な酒。
- しぼりたて搾ってすぐ、火入れも貯蔵もせずに出荷する酒。炭酸ガスの刺激と若々しい香りが特徴で、冬から早春の季節限定が多い。要冷蔵。
- 新酒しんしゅその醸造年度に造られ、搾られてすぐ出荷される日本酒。冬から春の「しぼりたて」はフレッシュで荒々しい若さが魅力。
- 直汲みじかぐみ搾り機から流れ出る酒を、タンクを経由せずそのまま瓶に詰めること。炭酸ガスが逃げず、微発泡の刺激としぼりたての香りが残る。
- スパークリング日本酒すぱーくりんぐにほんしゅ炭酸ガスを含む発泡タイプの日本酒。瓶内二次発酵による本格派から炭酸ガス注入の気軽な低アル系まで、乾杯需要で拡大中。
- 製麹せいきく蒸米に麹菌を付けて米麹を育てる工程。約2日間、麹室で温度と湿度を管理しながら手入れを繰り返す。「一麹」と言われる酒造りの要。
- 責めせめ搾りの最後に、強く圧力をかけて絞り出す部分の酒。味は濃く雑味も出やすいため、単独より他の部分と混ぜて使われることが多い。
- 洗米・浸漬せんまいしんせき精米した米を洗って糠を落とし、水に浸けて吸水させる工程。吟醸造りでは秒単位で吸水時間を管理し、蒸し上がりを左右する。
- 速醸そくじょう醸造用乳酸を最初に加えて酒母を約2週間で仕上げる、現在主流の製法。雑菌リスクが低く、きれいでクリーンな酒質になる。
- 斗瓶囲いとびんがこい袋吊りなどで搾った酒を、一斗(18L)入りのガラス瓶に集めて貯蔵すること。タンクを使わず少量ずつ管理する、最上級酒の仕上げ方。
- 中取りなかどり搾りの工程で中盤に出てくる、最も味の安定した部分だけを詰めた酒。最初は「あらばしり」、最後は「責め」と呼ぶ。
- 夏酒なつざけ夏向けに造られた季節限定の日本酒。低アルコールや微発泡、酸味を効かせた軽い味が多く、青や白の涼しげなラベルで冷やして飲む。
- 生酒なまざけ火入れ(加熱殺菌)を一度もしていない日本酒。搾りたてのフレッシュな香味が魅力で、要冷蔵。開栓後は早めに楽しむ。
- 生貯蔵酒なまちょぞうしゅ生のまま低温貯蔵し、出荷直前に1回だけ火入れする日本酒。生酒に近いフレッシュさと流通のしやすさを両立したタイプ。
- 生詰め酒なまづめしゅ貯蔵前に1回だけ火入れし、瓶詰め時は火入れせずに出荷する日本酒。秋のひやおろしがこのスタイルの代表格。
- にごり酒にごりざけ醪を目の粗い布などで漉し、米の細かい粒をあえて残した白く濁る日本酒。とろりとした口当たりと米の甘み、旨味が魅力。
- 破精はぜ麹菌の菌糸が米に食い込んだ状態のこと。内部に点々と食い込む「突き破精」は吟醸向き、表面まで覆う「総破精」は濃醇な酒向きとされる。
- 初添え・仲添え・留添えはつぞえ三段仕込みの3回の仕込みの呼び名。1日目が初添え、踊りを挟んで3日目が仲添え、4日目が留添え。回を追うごとに仕込む量を増やす。
- 火入れひいれ日本酒を62〜65°C前後で加熱殺菌する工程。酵素の働きを止めて品質を安定させる。通常は貯蔵前と出荷前の2回行う。
- 火落ちひおち火落菌という乳酸菌の一種が酒の中で増殖し、白濁して酸っぱく変質すること。アルコールに強い厄介な菌で、これを防ぐのが火入れの主な目的。
- ひやおろし春に搾った酒をひと夏熟成させ、秋に2度目の火入れをせず出荷する季節商品。角が取れたまろやかな味わいが秋の名物。
- 瓶燗火入れびんかんひいれ酒を瓶に詰めてから湯に浸けて加熱殺菌する方法。香りが逃げにくく、急冷すればフレッシュさが保たれる。手間がかかるが品質重視の蔵が採用。
- 瓶内二次発酵びんないにじはっこう瓶の中で酵母に再び発酵させ、自然の炭酸ガスを閉じ込めるスパークリング日本酒の製法。シャンパンと同じ考え方で、きめ細かい泡になる。
- 袋吊りふくろづり醪を入れた酒袋を吊るし、圧力をかけずに自然に滴る酒だけを集める搾り方。最も雑味が少なく、鑑評会出品酒や最高級酒に使われる。
- 槽搾りふなしぼり醪を入れた酒袋を「槽」と呼ばれる箱に積み重ね、上から圧力をかけて搾る伝統的な方法。時間はかかるが、雑味が出にくくきれいな酒になる。
- 並行複発酵へいこうふくはっこう麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同じタンクで同時に進む、日本酒特有の発酵形式。醸造酒最高クラスの度数を生む。
- 菩提酛ぼだいもと室町時代に奈良の菩提山正暦寺で確立された最古の酒母製法。生米を浸けた乳酸酸性の水「そやし水」で仕込む。近年復活し、酸味の強い個性派の酒に。
- 蒸米むしまい吸水させた米を甑で蒸す工程、またはその蒸した米。「外硬内軟」と呼ばれる、外は硬く中は柔らかい状態が理想とされる。
- 無濾過むろか搾ったあとの濾過(特に活性炭による調整)を行わないこと。酒本来の色や香味がそのまま残り、個性のはっきりした味になる。
- 無濾過生原酒むろかなまげんしゅ濾過なし・火入れなし・加水なし。搾ったままの状態に最も近い、濃厚でジューシーな人気スタイル。要冷蔵で早めに。
- 山卸やまおろし生酛造りで、酒母の米と麹を櫂ですり潰す重労働の作業。米を溶けやすくするのが目的で、これを廃止したのが山廃。
- 山廃やまはい生酛から山卸の作業を廃止した製法。「山卸廃止酛」の略。天然乳酸菌による育成は同じで、濃醇で酸のきいた味わいになる。
- 濾過ろか搾った酒から滓や色、余分な香味を取り除く工程。活性炭を使うと色が抜けて味が整うが、やりすぎると個性も削れる。無濾過はこれを省いた酒。
- 割水わりみず搾った原酒に水を加え、アルコール度数を15〜16度前後に調整すること。飲みやすさと味のバランスを整える工程で、これをしない酒が原酒。
INGREDIENT
原料・酒米
酒米の品種、麹、酵母、水。味の土台になるもの。
- 愛山あいやま兵庫県で生まれた希少な酒米。山田錦系と雄町系の血を引く。よく溶けて甘み・旨味の乗った濃厚な味わいになり、人気が高い。
- 秋田酒こまちあきたさけこまち秋田県が2004年に育成した酒米。山田錦に迫る醸造適性を目指し、大粒で心白が明瞭。すっきりと上品な甘みの酒になる。秋田の吟醸の主力米。
- 雄町おまち幕末に岡山で見いだされた、現存最古級の原生酒米。多くの酒米のルーツ。濃醇でふくらみのある味を生み、熱心なファンを持つ。
- 掛米・麹米かけまい仕込みに使う米の役割による呼び分け。麹を造るのが麹米、蒸してそのまま醪に加えるのが掛米。麹米に良い米を使い、掛米は別品種にする蔵も多い。
- 亀の尾かめのお明治時代に山形の篤農家が選抜した米。コシヒカリなどの祖先にあたり、一度は姿を消したが1980年代に酒米として復活。漫画『夏子の酒』のモデル。
- きょうかい9号酵母きょうかいきゅうごうこうぼ熊本県酒造研究所(銘柄「香露」)で分離された酵母。華やかな吟醸香を出し、低温発酵に強い。吟醸ブームの立役者で、今も鑑評会出品酒の定番。
- きょうかい酵母きょうかいこうぼ日本醸造協会が頒布する優良酵母。6号・7号・9号・1801号などの番号で呼ばれ、全国の蔵の酒質を支える標準インフラ。
- きょうかい7号酵母きょうかいななごうこうぼ1946年に長野県・宮坂醸造(真澄)の醪から分離された酵母。発酵力が強く、穏やかで華やかな香り。長く全国の吟醸酒で最も使われた酵母。
- 吟風ぎんぷう北海道で2000年に育成された酒米。寒冷地でも安定して育ち、道産米の酒造りを本格化させた。米の旨味がしっかり出る、ふくよかな酒質。
- 蔵付き酵母くらつきこうぼ蔵の中に棲みついている、その蔵固有の酵母。もともと酒造りは蔵付き酵母任せだった。近年これを分離して使う蔵が増え、「その蔵にしかない味」の根拠に。
- 麹こうじ蒸米に麹菌を繁殖させたもの。米のデンプンを糖に変える酵素の供給源で、「一麹、二酛、三造り」と言われる酒造りの心臓部。
- 硬水・軟水こうすいなんすい水に含まれるミネラルの量による分類。硬水仕込みは発酵旺盛で力強い「男酒」、軟水仕込みはやわらかな「女酒」と呼ばれてきた。
- 酵母こうぼ糖をアルコールと炭酸ガスに変える微生物。リンゴやバナナを思わせる吟醸香も酵母が生む。酒質を左右する影の主役。
- 越淡麗こしたんれい新潟県が山田錦と五百万石を交配して2004年に育成した酒米。高精米に耐え、新潟らしい淡麗さと山田錦の厚みを併せ持つ。県内の大吟醸に多い。
- 強力ごうりき鳥取県の在来酒米。背が高く栽培が難しいため一度途絶えたが、1980年代に復活した「幻の酒米」。硬派で厚みのある、熟成向きの酒になる。
- 五百万石ごひゃくまんごく新潟生まれの代表的酒米。1957年、県の米生産500万石達成を記念して命名。淡麗ですっきりした酒質になりやすい。
- 酒米さかまい酒造りに適した性質を持つ米の総称。正式には酒造好適米。大粒で心白があり、タンパク質が少ない。山田錦や雄町が有名。
- 仕込み水しこみみず酒の仕込みに使う水。日本酒の成分の約8割を占める。硬水は力強い酒、軟水はやわらかい酒になりやすく、酒質の土台を決める。
- 酒母しゅぼ本仕込みの前に酵母を大量に純粋培養しておくスターター。「酛」とも呼ぶ。乳酸で雑菌を抑えながら育てる、酒の土台。
- 白麹しろこうじ本来は焼酎用の麹菌。クエン酸を多く作るため、日本酒に使うとレモンのような爽やかな酸味が出る。2010年代から個性派の蔵が採用し、新しいジャンルに。
- 心白しんぱく酒米の中心部にある白く濁った部分。デンプンの構造が粗く、麹菌の菌糸が入り込みやすい。良い酒米の条件のひとつ。
- 神力しんりき明治時代に兵庫で生まれ、戦前の西日本で最も広く栽培された米。酒米としても優れていたが途絶え、1990年代以降に各地で復活。軽やかで柔らかい酒質。
- 醸造アルコールじょうぞうあるこーるサトウキビ糖蜜などを発酵・蒸留した純度の高いアルコール。香りを引き立て後味を軽快にする設計素材。特定名称酒では白米重量の10%以下。
- 精米歩合せいまいぶあい玄米を磨いて残った割合を示す数字。60%なら外側40%を削った意味。低いほど雑味が減り、華やかで淡麗な傾向になる。
- 種麹たねこうじ麹菌の胞子を集めたもの。蒸米に振りかけて米麹を育てる「麹の種」で、専門の種麹屋から蔵が買う。業界では「もやし」と呼ぶ。
- 玉栄たまさかえ滋賀・鳥取などで栽培される酒米。1965年に愛知県で育成され、米が硬く溶けにくいため、しっかりした酸と旨味のある酒になる。燗向きの純米酒に多い。
- 出羽燦々でわさんさん山形県が1997年に開発した県産酒米。美山錦と華吹雪の交配で、山形の酵母・麹菌と組み合わせた「DEWA33」ブランドで知られる。柔らかく清らかな酒質。
- 等外米とうがいまい農産物検査で3等以上の等級が付かなかった米。品質に問題があるわけではないが、これを使うと特定名称酒を名乗れず、純米造りでも普通酒扱いになる。
- 特A地区とくえーちく兵庫県の山田錦産地のうち、最高評価の格付けを受けた地域。三木市吉川町・加東市社などが該当し、この地区の山田錦は「特A山田錦」として最高級品扱い。
- 乳酸菌にゅうさんきん酒母の中で乳酸を作り、雑菌を抑えて酵母を守る菌。生酛・山廃は蔵の乳酸菌を取り込み、速醸は市販の乳酸を加える。この違いが味の骨格を分ける。
- 八反錦はったんにしき広島県を代表する酒米。明治期の「八反」系統から1983年に育成された。すっきりと軽快で、香りが立ちやすい酒になる。広島吟醸の主力。
- 花酵母はなこうぼナデシコやツルバラなど、花から分離した清酒酵母。東京農業大学が開発し、花ごとに香りや酸の個性が違う。華やかでフルーティーな酒になりやすい。
- 華吹雪はなふぶき青森県が1986年に育成した酒米。寒冷地向けで心白が大きく、青森の主力米。純米酒に使うと米の旨味がしっかり出る。出羽燦々の親でもある。
- 飯米はんまいコシヒカリなど、ふだん食べている米のこと。酒造好適米に対する言葉。心白が小さく高精米に向かないが、普通酒の掛米や、あえて個性を出す純米酒に使われる。
- 伏水ふしみず京都・伏見の地下から湧く、鉄分の少ない中硬水。灘の宮水よりやや軟らかく、まろやかで柔らかい「女酒」と呼ばれる伏見の酒質を支える。
- 扁平精米へんぺいせいまい米の形に沿って平たく削る精米技術。従来の球形に近い削り方より、雑味のもとになる外側だけを効率よく落とせる。精米歩合の数字と味の関係を変えた。
- 美山錦みやまにしき1978年に長野県で生まれた寒冷地向きの酒米。北アルプスの雪をイメージした命名。軽快で澄んだ、きれいな酒質になる。
- 宮水みやみず兵庫県西宮市で湧く、酒造りに理想的な硬水。リンとカリウムが多く鉄が少ないため発酵が力強く、辛口でキレのある灘の酒を生んだ。江戸時代に発見。
- 山田錦やまだにしき「酒米の王様」と呼ばれる最高峰品種。1936年に兵庫県で誕生。バランスの取れた酒質になり、大吟醸クラスの定番。
NUMBERS
スペックの数字
日本酒度・酸度など、ラベルの数値の読み方。
- 甘辛度・濃淡度あまからど日本酒度と酸度から計算し、甘い・辛い、濃い・淡いを1つの数字で表す指標。日本酒度だけでは分からない「酸が効いた辛さ」を補う。
- アミノ酸度あみのさんど旨味やコクのもとになるアミノ酸の量を示す数値。高いほど濃醇で旨味たっぷり、低いほど淡麗ですっきりした味になる。
- アルコール度数あるこーるどすう日本酒の標準は15〜16度。原酒は17〜20度前後、近年は8〜13度の低アルコール設計も増加。法律上、清酒は22度未満と定められている。
- 一括表示いっかつひょうじ裏ラベルなどに枠で囲んで記載される、法律で決められた必須項目。品目・原材料名・アルコール分・製造年月・製造者・内容量などが並ぶ。酒の身分証明書。
- 合・升(酒の単位)ごう日本酒の容量に今も使われる尺貫法の単位。一合は180ml、十合で一升(1.8L)、十升で一斗(18L)。一升瓶と四合瓶はこの単位から。
- 酸度さんど日本酒に含まれる乳酸・コハク酸などの有機酸の量を示す数値。平均は1.3前後。高いと味の輪郭がはっきりし、辛く濃く感じる。
- 賞味期限しょうみきげん日本酒には賞味期限の表示義務がない。アルコールで腐りにくいためだが、味は変化する。火入れ酒は製造年月から1年、生酒は数か月が美味しく飲める目安。
- 製造年月せいぞうねんげつラベルに必ず記載される、酒を瓶に詰めた年月。醸造した時期ではなく出荷のために詰めた時期なので、古酒でも製造年月は新しいことがある。
- 日本酒度にほんしゅど日本酒の甘辛の目安になる数値。プラスに大きいほど辛口傾向、マイナスに大きいほど甘口傾向。±0が基準点。
- BY(酒造年度)びーわいその酒を醸造した年度を示す表記。酒造年度は7月1日から翌年6月30日までで、「2024BY」なら2024年7月〜2025年6月の仕込み。ワインのヴィンテージにあたる。
TASTE
味・香りの表現
淡麗・濃醇・キレなど、味わいを伝える言葉。
- アタックあたっく酒を口に含んだ瞬間の第一印象。甘み・酸・アルコールの刺激がどれだけ強く来るかを表す。アタックが強い酒は印象的で、弱い酒は穏やかで飲みやすい。
- 甘口あまくち糖分や旨味による甘みをはっきり感じる味わい。日本酒度マイナスが目安。近年は甘酸バランスの良いジューシー系が人気。
- 旨口うまくち甘口・辛口とは別の軸で、米の旨味がしっかり感じられる味わいを表す言葉。甘くはないが濃い、という酒を説明するために広まった。
- 旨味うまみ米とアミノ酸に由来する、出汁のような味の厚み。日本酒の味の背骨で、「旨口」と呼ばれる酒はこの要素を前面に出したもの。
- 上立ち香うわだちか酒を器に注いだとき、口をつける前に鼻で感じる香り。吟醸香の華やかさや老香の有無がここで分かる。口に含んで感じる含み香と対になる言葉。
- 押し味おしあじ飲み込む直前から後にかけて、舌を押してくるような味の強さ。旨味と酸が支える力強さで、燗酒や食中酒の評価に使う。弱いと「腰がない」。
- カプロン酸エチルかぷろんさんえちるリンゴやメロンのような華やかな香りのもとになる香気成分。酵母が発酵中に作り、吟醸造りで多く生まれる。鑑評会向けの大吟醸に特に多い。
- 辛口からくち糖分が少なく、すっきりドライな味わいのこと。唐辛子のような「辛さ」ではない。日本酒度プラスが目安。食中酒の王道。
- 燗映えかんばえ温めると味がふくらみ、冷やのときより美味しくなること。旨味と酸がしっかりした純米酒、生酛・山廃、熟成酒に多い。燗酒選びの最重要キーワード。
- 木香きが杉の樽や木桶から酒に移る木の香り。樽酒の爽やかな杉の香りは長所だが、狙わずに強く出た場合や、酵母由来の似た匂いは欠点として扱われる。
- キレきれ飲み込んだあと、味がすっと消えていく後味の良さのこと。「キレがある」は余韻が短く潔い酒への褒め言葉。辛口や燗酒で際立つ。
- 吟醸香ぎんじょうかリンゴ・バナナ・メロンなどを思わせる果実様の華やかな香り。原料ではなく、低温発酵中に酵母が生み出す。吟醸酒の代名詞。
- コクこく味の厚みと複雑さ、口の中での広がりを表す言葉。旨味・甘味・酸味がバランスよく重なって生まれ、生酛や熟成酒、無濾過原酒で強く感じられる。
- 酢酸イソアミルさくさんいそあみるバナナやメロンのような甘い香りのもとになる香気成分。きょうかい7号や9号酵母が作る古典的な吟醸香で、カプロン酸エチルより穏やかで食事に合わせやすい。
- 酸味さんみ酒の味を引き締め、キレと爽やかさを生む味。乳酸・コハク酸・リンゴ酸などが元で、生酛は乳酸系の丸い酸、白麹はクエン酸の鋭い酸。近年は酸を活かす酒が人気。
- 雑味ざつみ苦味・渋み・えぐみなど、酒の味を濁らせる余分な味の総称。米の外側のタンパク質や脂質が原因で、精米や搾り方で抑える。少量なら個性にもなる。
- 熟成香じゅくせいか長期熟成でうまれるカラメル・ナッツ・蜂蜜・ドライフルーツ様の香り。古酒の魅力の核心で、劣化臭の老香とは区別される。
- 淡麗たんれい味の要素が少なく、軽くきれいですっきりした酒質のこと。対義語は濃醇。「淡麗辛口」は新潟酒が広めた定番スタイル。
- 淡麗辛口たんれいからくち軽くすっきりしていて甘みが少なく、後味がきれいに切れる味わい。新潟の酒に代表され、1980年代の地酒ブームで日本酒の理想像になった。
- 生老香なまひねか生酒を長く置いたときに出る、酵素の働きによる独特の劣化臭。ナッツや紙のような匂いで、火入れ酒の老香とは原因が違う。要冷蔵・早飲みが対策。
- 苦味にがみ日本酒の五味のひとつ。ほのかな苦味は味を引き締め、後味のキレにつながる。強すぎると雑味とされ、精米不足や搾りすぎが原因になる。
- 日光臭にっこうしゅう日本酒が光(特に紫外線)に当たって起こる劣化臭。数時間の直射日光でも発生し、獣臭や焦げたような匂いになる。茶色や緑の瓶、紙パックはこれを防ぐため。
- 濃醇のうじゅん旨味・甘み・酸がたっぷりで、飲みごたえのある濃い酒質のこと。淡麗の対義語。生酛系や雄町の酒に多い方向性。
- 老香ひねか保管不良などで生じる劣化臭。ムレた沢庵のようなと形容される。意図した熟成香とは別物で、光と高温を避ければ防げる。
- 含み香ふくみか口に含んだとき、鼻へ抜けていく香りのこと。グラスから立ちのぼる上立ち香と対になる言葉で、味と一体になった香りを指す。
- ふくらみ口に含んだ酒が、舌の上で横に広がって豊かに感じられること。米の旨味と適度な甘みがあり、温度が上がると増す。燗酒でよく使われる褒め言葉。
- フルーティーふるーてぃーリンゴ・バナナ・メロン・洋梨などの果物を思わせる香りと味わい。吟醸香を持つ酒に使われる表現で、日本酒初心者に最も選ばれやすいタイプ。
- 芳醇ほうじゅん香りが豊かで、味に厚みとコクがある酒質を表す言葉。淡麗辛口の対極として、米の旨味を前面に出した酒に使われる。「芳醇旨口」の形が多い。
- ボディぼでぃワイン由来の表現で、酒の重さや飲みごたえを表す。濃醇で厚みのある酒はフルボディ、淡麗で軽い酒はライトボディ。海外向けの説明で定着した。
- 戻り香もどりか酒を飲み込んだあと、喉から鼻に抜けて戻ってくる香り。余韻の一部で、熟成酒や旨味の強い酒で豊かに感じられる。
- 余韻よいん酒を飲み込んだあとに口の中に残る味と香り。長く心地よく続けば良い酒とされ、すっと消えれば「キレがある」と評される。どちらも設計次第。
- 4タイプ分類(薫酒・爽酒・醇酒・熟酒)よんたいぷぶんるい日本酒サービス研究会(SSI)が提唱した、香りの高低と味の濃淡で日本酒を4つに分ける方法。薫酒は香り高い吟醸、爽酒は軽快、醇酒は旨味重視、熟酒は熟成酒。
TEMPERATURE
飲み方・温度
雪冷えから飛び切り燗まで。温度の呼び名と楽しみ方。
- 熱燗あつかん50°C前後に温めた燗酒。香りはシャープに、キレは鋭く。寒い日の一杯の代名詞。本来は燗酒全体ではなく特定の温度帯の名前。
- 開栓後の変化かいせんご栓を開けた日本酒は空気に触れて少しずつ味が変わる。火入れ酒は冷蔵で1〜2週間、生酒は数日が目安。開けたては硬く、2〜3日目に開く酒もある。
- 燗酒かんざけ温めて飲む日本酒。30°C日向燗から55°C以上の飛び切り燗まで6段階の呼び名がある。旨味がふくらみ、食中酒の実力が開花する。
- 燗冷ましかんざまし燗をつけた酒が冷めてしまった状態。かつては味が落ちるとされたが、生酛や純米酒では旨味が落ち着いて美味しくなることもあり、あえて楽しむ人もいる。
- 食中酒しょくちゅうしゅ食事と一緒に飲むことを前提にした酒。香りが控えめで、旨味と酸が料理を引き立て、後味がすっきりしたものが向く。日本酒は本来、食中酒として発達した。
- 純アルコール量じゅんあるこーるりょう飲んだ酒に含まれるアルコールの正味の量。日本酒一合(15度)で約22g。厚労省のガイドラインでは1日20g程度が目安で、日本酒なら一合弱にあたる。
- 上燗じょうかん45℃前後の、しっかり温かい燗の呼び名。徳利を持つと熱く感じ、湯気が立つ。旨味と酸が引き締まり、キレが出る。燗酒らしい燗酒の標準温度。
- 涼冷えすずびえ15℃前後の、ほんのり冷たい状態の呼び名。冷蔵庫から出して30分ほど。香りと味のバランスが最もよく、純米酒の旨味も感じられる万能の温度。
- 飛び切り燗とびきりかん55℃以上の、最も熱い燗の呼び名。香りは飛び、辛口でシャープな味になる。寒い日に体を温める飲み方で、冷めていく途中の変化を楽しむ人も。
- 日本酒カクテルにほんしゅかくてる日本酒をベースにしたカクテル。ライムを絞った「サムライロック」、炭酸で割る「日本酒ハイボール」、梅酒や柑橘と合わせる飲み方など。米の甘みが柑橘と好相性。
- ぬる燗ぬるかん40°C前後に温めた燗酒。香りが立ち、旨味が最もふくらむ「いいとこ取り」の温度帯。燗酒入門にも通の晩酌にも最適。
- 花冷えはなびえ10℃前後まで冷やした状態の呼び名。桜の季節の肌寒さにたとえた温度で、冷蔵庫から出して少し置いたくらい。吟醸酒の香りが心地よく立つ。
- 晩酌ばんしゃく夕食とともに家で酒を飲むこと。日本酒の最も日常的な飲まれ方で、普通酒や本醸造、紙パック酒はこの需要を支えてきた。「晩酌酒」は飲み飽きない定番酒の意。
- 人肌燗ひとはだかん35℃前後の、人の肌くらいの温かさの燗。米や麹の香りがやさしく立ち、味がふっくらする。純米酒や生酛の旨味を穏やかに引き出す温度。
- 日向燗ひなたかん30℃前後の、ほんのり温かい燗の呼び名。日なたの陽だまりのような温度で、冷たくも熱くもない。香りが穏やかに開き、米の甘みが感じられる。
- 冷やひや本来は「常温(20°C前後)」のこと。冷蔵庫のない時代、燗をつけない酒=冷やだった。冷酒と混同されやすい要注意ワード。
- ペアリングぺありんぐ料理と日本酒の組み合わせを楽しむこと。「同調」「対比」「洗い流す」が基本の考え方。旨味×旨味の掛け算は日本酒の得意技。
- 保存方法ほぞんほうほう日本酒の敵は光・高温・空気。火入れ酒は冷暗所、生酒は必ず冷蔵で。瓶は立てて置き、開栓後は冷蔵庫で早めに飲み切る。日光は数時間で酒を傷める。
- 和らぎ水やわらぎみず日本酒と一緒に飲む水のこと。洋酒のチェイサーにあたる。酔いを穏やかにし、味覚をリセットして次の一杯をおいしくする。
- 雪冷えゆきびえ5℃前後まで冷やした状態の呼び名。冷蔵庫でよく冷やし、注いだ瓶が結露するくらい。香りは閉じるが、キレと清涼感が際立つ。夏酒や生酒向き。
- 湯煎ゆせん酒を入れた徳利を湯に浸けて温める、最も基本的な燗のつけ方。電子レンジより温度が均一で香りが飛びにくい。沸騰した湯を止めて徳利を入れ、2〜3分が目安。
- 冷酒れいしゅ冷やして飲む日本酒。5°Cは雪冷え、10°Cは花冷え、15°Cは涼冷えと、温度ごとに美しい呼び名がある。吟醸系・生酒向き。
- ロックろっく日本酒を氷を入れたグラスで飲む方法。原酒や無濾過生原酒など、度数と味が濃い酒に向く。氷が溶けるにつれて味が変わり、夏の飲み方として定着。
VESSEL
酒器
お猪口・徳利・枡など、日本酒の器の名前。
- 有田焼ありたやき佐賀県有田町で作られる、日本で最初の磁器。白く薄く硬い素地に染付や色絵を施す。飲み口が薄く、酒の味と香りを素直に伝える。江戸時代は「伊万里」として輸出。
- 一升瓶いっしょうびん1.8リットル入りの日本酒の標準的な大瓶。明治末期に登場し、大正時代に規格化された。茶色や緑色は光による劣化を防ぐため。空き瓶は回収・再利用される。
- 江戸切子えどきりこ東京で作られる、ガラスに文様を彫り込んだカットグラス。江戸末期に始まり、色被せガラスに矢来や菊つなぎなどの文様を刻む。冷酒のぐい呑みやロックグラスに。
- お猪口おちょこ日本酒用の小さな杯。徳利とセットの定番酒器。一口二口で飲み切るサイズが、酒の温度を保ち、注ぎ合う文化を支えてきた。
- 片口かたくち注ぎ口が片側についた鉢型の酒器。もとは液体を移す台所道具。口が広く香りが開きやすいため、冷酒のデキャンタとして人気。
- 九谷焼くたにやき石川県で作られる、色絵の華やかさで知られる磁器。赤・緑・黄・紫・紺青の「九谷五彩」で描かれた絵付けが特徴。酒器では絵柄を楽しむお猪口や徳利が人気。
- ぐい呑みぐいのみお猪口より大ぶりの杯。「ぐいっと呑む」が名の由来とされる。たっぷり注げて存在感があり、作家ものの器を楽しむ世界も深い。
- 盃さかずき平たく開いた伝統的な酒器。神事や祝いの席の三三九度でおなじみ。口径が広く香りが広がりやすい、最も古い形の酒器のひとつ。
- 酒燗器しゅかんき燗酒をつけるための専用器具。湯を張った容器に徳利やちろりを浸ける卓上型や、電気で温度を保つ業務用など。自宅なら鍋の湯煎でも十分だが、温度管理が楽になる。
- 磁器と陶器じきととうき酒器の素材の基本的な違い。磁器は石の粉が原料で薄く硬く、香りや味をそのまま伝える。陶器は土が原料で厚く温かみがあり、燗酒の温度を保ちやすい。
- 蛇の目じゃのめ利き酒用の猪口の底に描かれた青い二重丸の模様。白い部分で酒の色を、青との境目で透明度(冴え)を見るための道具。
- 錫すず熱伝導がよく、酒の温度が器にすぐ伝わる金属。錫の酒器で飲むと味がまろやかになると言われ、燗酒にも冷酒にも向く。柔らかいので手で曲がる製品もある。
- 銚子ちょうし本来は神事や婚礼で酒を注ぐ、長い柄のついた金属や漆の器。現在は居酒屋で徳利のことを「お銚子」と呼ぶのが一般的で、徳利とほぼ同じ意味に。
- ちろり燗をつけるための取っ手つき金属容器。錫や銅製が伝統的。湯煎で手早く均一に温まり、燗酒好きの必携道具とされる。
- 徳利とっくり首が細くくびれた日本酒の注ぎ器。1合・2合サイズが定番。湯煎で燗をつける器としても優秀。注ぐ音まで含めて楽しむ道具。
- 盃洗はいせん宴席で盃をやり取りする際、盃をすすぐための水を入れた鉢。江戸から明治にかけて使われた酒器の脇役で、現在は骨董や花器として親しまれる。
- 平盃ひらさかずき口が広く浅い盃。酒が空気に触れる面が大きく、香りが穏やかに広がり、燗酒の旨味を受け止めやすい。神事や祝いの席でも使われる伝統的な形。
- 備前焼びぜんやき岡山県備前市周辺で作られる、釉薬を使わない焼き締めの陶器。土と炎の模様が一つひとつ違い、「備前の徳利で酒がうまくなる」と言われる。酒器の代表的な産地。
- 枡ます木製の四角い器。もとは米や酒を量る計量器で、一合枡=180ml。檜の香りとともに飲む樽酒や、もっきり(枡酒)でおなじみ。
- 四合瓶よんごうびん720ml(四合)入りの瓶。一升瓶の半分より少し少ない、家庭で飲み切りやすい標準サイズ。ワインボトルに近い大きさで、贈答や輸出にも使われる。
- 冷酒器れいしゅき冷酒を冷たいまま楽しむための器。氷を入れる筒が内側にあるガラス徳利や、外側を氷で冷やす片口など。冷やした酒が温まらないよう工夫されている。
- ワイングラスわいんぐらす香りを集める形状のため、吟醸酒やスパークリングの華やかな香りを楽しむのに向く。2011年から「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」が開かれ、飲み方として定着。
CULTURE
蔵と文化
杜氏・蔵元・角打ちなど、日本酒を取り巻く言葉。
- IWC SAKE部門あいだぶりゅーしーロンドンで開かれる世界最大級のワイン品評会に2007年に設けられた日本酒部門。国際的な審査員が評価し、最高賞「チャンピオン・サケ」は海外での日本酒の知名度を高めた。
- 甘酒あまざけ米由来の甘い飲み物。麹で米を糖化させたノンアルコールの「米麹甘酒」と、酒粕を溶いた「酒粕甘酒」の2系統がある。
- 一麹、二酛、三造りいちこうじ酒造りで大切な工程の順を示す格言。麹造りが第一、酒母造りが第二、醪の管理が第三。麹が良くなければ、あとの工程でいくら頑張っても取り返せないという意味。
- 越後杜氏えちごとうじ新潟県出身の杜氏集団。江戸時代から関東や北陸の蔵に出向き、淡麗な酒質を各地に広めた。日本三大杜氏のひとつで、新潟の酒の技術的基盤。
- 大神神社おおみわじんじゃ奈良県桜井市にある日本最古の神社のひとつで、酒造りの神として信仰される。杉玉の発祥地で、毎年11月の酒まつりで全国の酒蔵に杉玉を授ける。
- 桶買い・桶売りおけがい大手メーカーが地方の蔵から酒をタンク単位で買い、自社の銘柄として売る取引。昭和期に盛んで、多くの地方蔵の経営を支えた。近年は減少し、表示の透明化も進んだ。
- お屠蘇おとそ正月に一年の無病息災を願って飲む薬草酒。山椒や桂皮などを調合した屠蘇散を日本酒やみりんに浸して作る。年少者から順に飲むのがならわし。
- 御神酒おみき神様に供える日本酒。神事のあと参列者もいただき、神の力を分けてもらう。日本酒と神道の深い結びつきを象徴する言葉。
- 鏡開きかがみびらき祝いの席で酒樽の丸い蓋(鏡)を木槌で開く儀式。「運を開く」に通じる縁起事で、結婚式や式典の乾杯を華やかに彩る。
- 角打ちかくうち酒屋の店内で、買った酒をその場で立ち飲みすること。北九州発祥の言葉とされる。酒販店ならではの品揃えと価格が魅力。
- 頭かしら蔵人の中で杜氏に次ぐ立場。杜氏の指示を受けて現場の作業全体を仕切り、蔵人たちをまとめる。会社で言えば現場監督で、次の杜氏候補でもある。
- 粕取り焼酎かすとりしょうちゅう日本酒の酒粕を蒸留して造る焼酎。清酒の副産物を活かした伝統的な酒で、吟醸酒の粕から造ったものは吟醸香が移り、華やかな香りになる。
- 釜屋かまや蔵人のうち、米を蒸す甑と釜を担当する役職。早朝から火を起こし、その日の蒸米を仕上げる。蒸米の出来は麹と醪を左右するため、地味だが欠かせない仕事。
- 唎酒師ききさけし日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が認定する、日本酒の提供と提案の専門資格。ソムリエの日本酒版で、飲食店や酒販店の従事者を中心に約5万人。
- 利き酒ききざけ色・香り・味の順で日本酒を観察し評価すること。蛇の目猪口を使うのが正式。資格「唎酒師」や利き酒イベントも人気。
- 菊酒きくざけ9月9日の重陽の節句に、菊の花を浮かべて飲む酒。菊は長寿の象徴で、平安時代の宮中行事に由来する。秋の酒の楽しみとして、ひやおろしとともに語られる。
- 金賞受賞酒きんしょうじゅしょうしゅ全国新酒鑑評会などで金賞を得た酒、またはその蔵の酒。鑑評会の出品酒そのものを限定販売することもあり、蔵の技術の頂点を味わえる。
- 蔵人くらびと杜氏のもとで酒造りに携わる職人たち。麹担当の「麹屋」、酒母担当の「酛屋」など、伝統的な役職名で仕事が分かれている。
- 蔵開きくらびらき酒蔵が新酒の季節などに蔵を一般開放するイベント。搾りたての試飲、蔵限定酒、蔵見学が楽しめる、日本酒ファンのお祭り。
- クラフトサケくらふとさけ日本酒の製法をベースに、果物やハーブなどの副原料を加えたり、新しい発想で造る酒。清酒の免許が新規に取れないため「その他の醸造酒」として造られる。若い造り手が中心。
- Kura Masterくらますたー2017年に始まった、フランスで開かれる日本酒コンクール。フランス人のソムリエや料理人が審査するのが特徴で、フランス料理との相性を含めた評価が行われる。
- 蔵元くらもと酒蔵の経営者・オーナー(の家)のこと。造りの責任者である杜氏と対になる言葉だが、近年は自ら醸す「蔵元杜氏」も増えている。
- 麹屋こうじや蔵人のうち、麹造りを専門に担当する役職。「一麹」と言われる最も重要な工程を任され、麹室で昼夜を問わず麹の温度を管理する。杜氏に次ぐ重責。
- 西条さいじょう広島県東広島市の酒どころ。灘・伏見と並ぶ「日本三大酒どころ」のひとつで、軟水で酒を造る「軟水醸造法」発祥の地。駅前に酒蔵の白壁と赤レンガの煙突が並ぶ。
- 酒蔵さかぐら日本酒を造る蔵・製造元のこと。全国に約1,000以上あり、その土地の水と米と気候が味に映る。見学を受け入れる蔵も多い。
- 酒蔵ツーリズムさかぐらつーりずむ酒蔵を訪ね、見学や試飲を通じてその土地の酒と文化を楽しむ観光。2010年代から国や自治体が推進し、見学施設や直売所を整える蔵が増えた。
- 酒匠さかしょうSSIが認定する、唎酒師の上位資格。日本酒と焼酎の高度なテイスティング能力を持ち、香味の評価や品質管理、商品開発の助言ができる専門家。
- SAKE(海外の日本酒)さけ海外で日本酒が呼ばれる名称。近年は米国・欧州・アジアで現地醸造も広がり、日本酒の輸出額は2010年代に急増。国産米・国内醸造のものだけが「日本酒」と表示できる。
- 酒粕さけかす醪を搾ったあとに残る固形分。旨味と栄養の宝庫で、粕汁・甘酒・粕漬けなど食文化の名脇役。板粕・バラ粕などの形がある。
- 酒税法しゅぜいほう酒類の定義・分類・税率・製造免許を定めた法律。日本酒(清酒)の定義や、アルコール添加の上限、免許制度もここで決まる。自家醸造の禁止もこの法律による。
- 酒造免許しゅぞうめんきょ酒を製造するために必要な国の免許。清酒の新規免許は需給調整のため原則として出ず、新しく蔵を始めるには既存の蔵を引き継ぐか、2021年からの輸出専用免許を取る。
- 地酒じざけその土地の蔵が地元の水や米で造る酒。灘・伏見など大手産地の酒に対する言葉で、1980年代の地酒ブームで全国の小さな蔵の酒が見直された。
- 上槽じょうそう発酵を終えた醪を搾り、酒と酒粕に分ける工程。自動圧搾機、伝統の槽(ふね)搾り、袋吊りなど方法によって酒質が変わる。
- 杉玉すぎだま杉の葉を球状に束ねて酒蔵の軒先に吊るす飾り。新酒ができた合図で、青々とした杉玉が茶色に変わるにつれ酒の熟成を知らせる。奈良・大神神社が発祥。
- 全国新酒鑑評会ぜんこくしんしゅかんぴょうかい1911年から続く、日本で最も権威のある清酒のコンクール。酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が毎年開き、その年の新酒(主に大吟醸)を審査して金賞を決める。
- 樽酒たるざけ杉樽に貯蔵し、杉の香りを移した日本酒。吉野杉の樽が最上とされる。鏡開きの樽でおなじみ、木香がごちそうの伝統スタイル。
- 丹波杜氏たんばとうじ兵庫県丹波篠山市を本拠とする杜氏集団。江戸時代から灘の酒蔵を支え、灘の辛口の酒を造ってきた。日本三大杜氏のひとつで、日本酒の近代化を担った技術者集団。
- 杜氏とうじ酒造りの最高責任者。蔵人を率いて酒質のすべてを差配する。南部・越後・但馬など出身地ごとの杜氏集団が技を伝えてきた。
- 特約店とくやくてん蔵と直接契約し、その銘柄を扱う権利を持つ酒販店。品質管理と適正価格を守る店に限って卸す仕組みで、人気銘柄の多くはこの特約店でしか正規に買えない。
- 灘五郷なだごごう兵庫県神戸市から西宮市にかけての5つの酒造地域(西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷)。日本最大の酒どころで、宮水と六甲の風、丹波杜氏が辛口の酒を生んだ。
- 南部杜氏なんぶとうじ岩手県石鳥谷町を本拠とする、日本最大の杜氏集団。江戸時代に南部藩で生まれ、東北から全国の蔵へ酒造りに出向いた。日本三大杜氏のひとつ。
- 日本酒造組合中央会にほんしゅぞうくみあいちゅうおうかい全国の清酒・焼酎などの製造者で組織する業界団体。全国新酒鑑評会の共催、日本酒の日の制定、海外プロモーションなどを行う。各都道府県の酒造組合を束ねる。
- 日本酒の日にほんしゅのひ10月1日。酒壺を表す「酉」が十二支の10番目であることなどにちなみ、1978年に制定された記念日。全国一斉乾杯イベントも。
- 伏見ふしみ京都市南部の酒どころ。灘に次ぐ生産量を誇り、名水「伏水」の中硬水が生む、まろやかな「女酒」で知られる。月桂冠・黄桜・宝酒造など大手が集まる。
- 松尾大社まつのおたいしゃ京都市西京区にある、酒造りの神として最も広く信仰される神社。全国の酒蔵から奉納された酒樽が並び、11月には醸造安全を祈る上卯祭が行われる。
- 銘柄めいがら酒の商品名・ブランド名。「久保田」「獺祭」「十四代」など。ひとつの蔵が複数の銘柄を持つことも、ひとつの銘柄に多くの商品があることもある。
- 酛屋もとや蔵人のうち、酒母(酛)造りを担当する役職。酵母を健全に増やす酒母は醪の土台で、「二酛」と言われる重要工程。生酛造りでは山卸の指揮も執る。
- 諸白もろはく麹米と掛米の両方に精白した米を使う、室町時代に奈良の寺院で確立された製法。現代の清酒の原型で、「奈良の諸白」は江戸初期まで最高級酒の代名詞だった。
- 醪もろみ酒母に麹・蒸米・水を加えて発酵させている状態のもの。約3〜4週間かけて発酵し、これを搾ると日本酒と酒粕に分かれる。
- 立春朝搾りりっしゅんあさしぼり立春の日の早朝に搾り、その日のうちに届ける生原酒。日本名門酒会が1998年に始めた行事で、参加蔵が夜通し作業し、神社でお祓いを受けて出荷する縁起酒。
- 和醸良酒わじょうりょうしゅ「和」が良い酒を醸し、良い酒が「和」を生む、という酒造りの格言。蔵人の心が揃わなければ良い酒はできない、という意味で、多くの蔵が掲げる言葉。
用語の解説はすべて酔談部編集部が執筆しています。より詳しい読み物は記事一覧へ。気になる用語が見つからない場合は、今後の追加リクエストとしてお問い合わせからお知らせください。