本文へスキップ
日本酒の基礎

日本酒のラベルの読み方 — 必須表示と任意表示

酔談部 編集部

日本酒のラベルの読み方 — 必須表示と任意表示
写真: Dudva / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

日本酒のラベルには、必ず書く項目と、条件を満たせば書ける項目があります。国税庁の表示基準にもとづく必須表示・任意表示・表示禁止事項を分けて、ラベルの読み方を整理します。

ラベルのルールは国が定めている

日本酒のラベルに何を書くかは、蔵が自由に決めているわけではありません。酒類の表示には国税庁が所管するルールがあり、日本酒については1989年(平成元年)に告示された「清酒の製法品質表示基準」が中心になります。このほか、20歳未満の飲酒防止に関する表示基準や、食品表示のルールも関わってきます。

表示基準の中身は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • 必ず書かなければならないこと(必須表示)
  • 条件を満たした場合に書けること(任意表示)
  • 書いてはいけないこと(表示禁止事項)

銘柄名が大きく入った表ラベルと、細かな情報が並ぶ裏ラベルに分かれていることが多いので、両方を見る習慣をつけておくと安心です。

古い清酒のラベルが並べて展示されている様子
旧三上家住宅(京都府宮津市)に展示されている清酒のラベル。表ラベルには銘柄名とともに、酒の種類や蔵元の名前が入っている 写真: Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

必ず書かれていること(必須表示)

品目:「清酒」または「日本酒」

酒の種類として「清酒」と書かれます。「日本酒」と表示できるのは、原料の米に国産米だけを使い、日本国内で造った清酒に限られます。「日本酒」という名前そのものが、国の地理的表示に指定されているためです。

原材料名と精米歩合

水を除いた原材料が、「米、米こうじ」に続けて、ほかの原材料を使用量の多い順に書かれます。醸造アルコールを使っていれば、ここに「醸造アルコール」と入ります。純米酒や吟醸酒などの特定名称を名乗る場合は、原材料名の近くに精米歩合も書くことになっています。

アルコール分

「アルコール分15度」「15%」などと書かれます。「15度以上16度未満」のように、幅をもたせた書き方もよく見かけます。

内容量、製造者の名前と所在地

720mlや1.8Lといった内容量と、造った会社の名前、製造場の所在地が書かれます。所在地は記号で示すことも認められています。

生酒の保存・飲用上の注意

搾ったあと一度も加熱処理(火入れ)をしない生酒には、「要冷蔵」のような保存や飲用上の注意、または賞味期限を書くことになっています。生酒を買ったら、冷蔵庫で保管するのが基本です。

輸入品の原産国名など

海外で造られた清酒を輸入した場合は原産国名を書きます。また、外国産の清酒を混ぜた場合は、その旨と使用割合を表示します。

20歳未満の飲酒防止の表示

別の基準にもとづいて、「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」という趣旨の表示も入ります。妊娠中や授乳期の飲酒に注意を促す表示は、業界の自主的な取り組みとして載せられているものです。

必須表示の文字は、原則として8ポイント以上の大きさで書くことになっています。

条件を満たせば書ける「任意表示」

製造時期(2022年までは必須)

「製造年月」などの製造時期は、かつては必ず書く項目でした。2022年(令和4年)の表示基準の改正で、2023年1月からは任意の記載事項に変わっています。今も多くの商品に書かれていますが、書かれていない酒も出てきています。

注意したいのは、製造時期が「酒を造った時期」ではなく、「販売用の容器に詰めて封をした時期」を指すことです。タンクで長く寝かせた酒でも、瓶に詰めた月が書かれます。

日本酒は食品表示のルール上、賞味期限の表示を省略できる品目にあたり、一般には書かれていません。とはいえ、生酒や香りを楽しむタイプは、早めに飲むほうが持ち味を感じやすいでしょう。

特定名称(純米・吟醸・本醸造など8種類)

純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、吟醸酒、大吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒の8種類は、原料や精米歩合の条件を満たしたときだけ名乗れる呼び名です。主な条件は次のとおりです。

  • 麹に使う米(麹米)が、白米全体の15%以上であること
  • 原料の白米は、国の検査で3等以上に格付けされた玄米(またはそれに相当する玄米)を精米したもの
  • 精米歩合は、吟醸酒が60%以下、大吟醸酒が50%以下、本醸造酒が70%以下(純米酒には精米歩合の条件がない)
  • 特別純米酒・特別本醸造酒は、精米歩合60%以下か、特別な造り方をしたことの説明が必要
  • 醸造アルコールを使う場合は、白米の重量の10%以下

特定名称は品質の格付けではなく、造り方のスタイルを示すものです。どれにも当てはまらない酒は、一般に「普通酒」と呼ばれます。

原料米の品種名

「山田錦」のような品種名は、その米が原料米全体の50%を超えているときに、使用割合とあわせて書けます。「山田錦100%」といった表示は、このルールにもとづいています。

酒の産地名

どこで造られた酒かを示す産地名は、その酒のすべてがその土地で醸造された場合に限って書けます。別の産地の酒を混ぜたものには使えません。

生酒・原酒などの言葉

  • 原酒:搾ったあと、水を加えてアルコール分を調整していない酒。1%未満の範囲の加水調整は認められている
  • 生酒:搾ったあと、一度も加熱処理をしていない酒
  • 生貯蔵酒:加熱せずに貯蔵し、出荷のときに加熱処理した酒
  • 生一本:ひとつの製造場だけで醸造した純米酒
  • 樽酒:木の樽で貯蔵し、木の香りがついた酒
  • 貯蔵年数:1年以上貯蔵した酒に、1年未満を切り捨てた年数を書ける

2023年からは、「生原酒」「生貯蔵原酒」のように言葉を組み合わせた表示もできるようになりました。

「極上」「優良」「高級」

こうした言葉は、同じ蔵の同じ種類や銘柄の中で、原料や造り方から客観的に説明できる場合に限って使えます。蔵の中での位置づけを示すもので、ほかの蔵の酒と比べる意味では使えません。

表示基準の外にある情報:日本酒度・酸度など

裏ラベルには、表示基準では決められていない情報もよく書かれています。これらは蔵がすすんで載せている参考情報です。

  • 日本酒度:水と比べた酒の重さ(比重)をもとにした数値。プラスが大きいほど糖分が少なく辛口寄り、マイナスが大きいほど甘口寄りの傾向がある
  • 酸度:酒に含まれる酸の量の目安。多いほど味が引き締まって感じられやすい
  • アミノ酸度:旨味やコクに関わる成分の量の目安
  • 使用酵母、杜氏の名前、おすすめの温度帯など

日本酒度はあくまで目安で、同じ数値でも酸度や飲む温度によって感じ方は変わります。また「生詰」「ひやおろし」「無濾過」のように、表示基準では定義されていない言葉も使われます。意味は蔵ごとの説明を読んで確かめるのが確実です。

書いてはいけないこと(表示禁止事項)

表示基準は、誤解を招く表現も禁じています。

  • 「最高」「第一」「代表」など、業界で一番であるかのように受け取られる言葉
  • 品評会で賞を取ったかのように誤解させる言葉や、官公庁がすすめているかのように誤解させる言葉
  • 特定名称酒ではない酒に、特定名称と紛らわしい言葉を使うこと

最後の点には例外があり、近くに「特定名称酒には当たらない」ことがはっきり分かる説明を添えれば使えます。たとえば、純米酒の条件を満たさない「米だけの酒」のような商品には、純米酒ではない旨の説明が書かれています。

地理的表示(GI)も手がかりになる

地理的表示(GI)は、産地ならではの特性が認められた酒について、国税庁長官の指定を受けた産地名を、その基準を満たした酒だけが名乗れる制度です。清酒では、2005年の「白山」(石川県白山市)を皮切りに、2015年に国全体を範囲とする「日本酒」、2016年に「山形」、2018年に「灘五郷」などが指定され、その後も各地に広がっています。GIの表示は、産地で定めた基準を満たしていることのしるしです。

ラベルを読む順番の例

  1. 品目と特定名称で、造りのスタイルをつかむ
  2. 原材料名と精米歩合で、醸造アルコールの有無と米の磨き具合を見る
  3. 「生酒」「原酒」などの言葉で、保存方法とアルコールの強さを確かめる
  4. 製造時期と蔵の所在地を見る
  5. 日本酒度や酸度などの参考情報で、味の方向を想像する

慣れてくると、ラベルをひと通り眺めるだけで、その酒の大まかな性格がつかめるようになります。

「日本酒の基礎」の他の記事

すべて見る