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日本酒の基礎

精米歩合とは — 数字が小さいほど良い酒なのか

酔談部 編集部

精米歩合とは — 数字が小さいほど良い酒なのか
写真: ch1310 / CC0 / Wikimedia Commons

ラベルの「精米歩合60%」は、玄米をどれだけ削ったかを示す数字です。意味と削る理由、表示のルール、低精白の酒の魅力をたどり、「磨くほど良い酒」という思い込みをほどいていきます。

精米歩合は「残った割合」

精米歩合は、玄米を削って白米にしたとき、もとの玄米の重さに対して白米がどれだけ残ったかを示す割合です。精米歩合60%なら、外側の40%を削り落とし、内側の60%を使ったことになります。

ここで混乱しやすいのが言葉の向きです。数字が小さいほどたくさん削っているので、「精米歩合が高い」は削りが少ない米、「精米歩合が低い」はよく磨いた米を指します。「よく磨いた酒=精米歩合が高い酒」ではない点に注意してください。

ふだん家庭で食べている白米は、精米歩合でいうと90%をやや超えるくらいです。これに対して、日本酒の原料には75%以下まで削った米が多く使われ、吟醸酒では60%以下、大吟醸酒では50%以下まで削ります。

なお、ラベルに書かれる精米歩合は、玄米と白米の重さの比率です。精米の途中で割れて細かくなった米が多いと、実際に一粒一粒をどれだけ削れたかとは少しずれることがあります。そのため蔵では、粒の重さの変化から計算する「真精米歩合」を、精米の出来を確かめる目安として使うこともあります。

精米機の中の玄米と、精米したあとの米の比較
左は精米前の玄米、右は家庭用の精米機で精米した食用米。外側の層を取り除くと白く見えるようになる 写真: Asacyan / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

なぜ米を削るのか

米粒の外側には、タンパク質や脂質、ミネラル、ビタミンなどが多く含まれています。これらは発酵を支える成分でもありますが、多すぎると雑味が出たり、香りがくもったりする原因になります。一方、米の中心部はほとんどがデンプンです。

外側を削るほど、醪に溶け出す成分はデンプンが中心になり、酒は次のような方向に近づきます。

  • 雑味が少なく、きめの細かい口当たりになりやすい
  • 低い温度でゆっくり発酵させやすく、華やかな香りを引き出しやすい
  • 後味が軽く、すっきりした印象になりやすい

ただし、吟醸酒の華やかな香りそのものは、発酵中に酵母が生み出すものです。精米は香りが出やすい条件を整える役割で、削っただけで香りがつくわけではありません。

どうやって削るのか

酒蔵の建屋に並ぶ大型の精米機
月桂冠の酒蔵に並ぶ酒造用の精米機 写真: 月桂冠 / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

酒造りの精米には、酒造用の精米機が使われます。回転する砥石のようなロールに米を当てて、表面を少しずつ削り取っていく仕組みです。急いで削ると米が熱を持って割れやすくなるため、精米歩合を低くするほど時間をかけてゆっくり削る必要があり、深く磨く場合は数日がかりになることもあります。

精米したての米は熱を帯び、水分も抜けているので、すぐには使わずにしばらく置いて落ち着かせます。この期間を「枯らし」と呼びます。また、米粒の形に沿って平たく均一に削る「扁平精米」のように、削り方そのものを工夫する技術も広がっています。

削られた部分は米ぬかになります。外側から順に赤ぬか・中ぬか・白ぬかと呼び分けられ、食品の原料などに活用されています。

足踏みから機械へ

足で杵を動かして米を搗く人々の挿絵
1935年刊行の『日本酒造り唄集』に描かれた「米踏み」。足で杵を動かして米を搗く、機械化以前の精米のようす 図: 作者不明 / Public domain / Wikimedia Commons

機械による精米が広まる前は、足で杵を動かして米を搗く足踏み精米や、川の流れを利用する水車精米が行われていました。どちらも深く削ることは難しく、いまのように高い精白の酒は造れませんでした。

明治時代に入ると動力で動く精米機が登場し、改良を重ねた竪型の精米機が酒蔵に普及していきます。昭和の初めごろには、それまでよりずっと深く削れるようになり、酒米や酵母の改良とあわせて、吟醸酒の誕生につながりました。

表示のルール

精米歩合の扱いは、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で決められています。特定名称ごとの条件は次のとおりです。

特定名称酒には、原材料名のすぐ近くに精米歩合を書くことが義務づけられています。特定名称を名乗らない普通酒には表示の義務がありませんが、自主的に書いている商品もあります。

蔵によっては、麹に使う米(麹米)と、醪に加える米(掛米)で精米歩合を変え、ラベルに両方を書き分けていることもあります。商品名に数字を入れる例もあり、たとえば獺祭の「磨き二割三分」は精米歩合23%を表しています。

数字が小さいほど良い酒なのか

結論からいえば、精米歩合は酒の良し悪しを決める数字ではありません。

磨けば失うものもある

外側を削ると雑味は減りますが、米由来の旨味や、ふくらみのある味わいも一緒に控えめになりがちです。また、精米歩合50%の酒を造るには、使う白米の2倍の重さの玄米が必要です。深く磨いた酒の価格が高くなるのは、原料と手間がそれだけかかるためで、味の優劣を示しているわけではありません。

味を決めるのは精米歩合だけではない

酒の味わいは、米の品種、水、酵母、酒母の造り方、発酵の温度、搾り方、火入れや熟成など、多くの要素の組み合わせで決まります。精米歩合60%の酒どうしでも、蔵が違えばまったく違う味になります。反対に、精米歩合70%でもすっきりと軽い酒もあれば、よく磨いていても濃醇に仕上げた酒もあります。

同じ数字でも、米の品種によって意味合いが変わる点も見逃せません。粒の大きさや心白の現れ方、米の硬さは品種ごとに違い、醪の中での溶け方も変わります。精米歩合は、あくまで「その米をどれだけ削ったか」を示す数字であって、酒の設計図の一部にすぎません。

好みと場面で選ぶ

香りを楽しむ一杯には、よく磨いた吟醸系が向いています。一方、食事と一緒にゆっくり飲むなら、ほどほどに削った酒のほうが料理の味を受け止めてくれることも多いものです。数字は「どちらの方向に設計された酒か」を知る手がかりとして使うのがよいでしょう。

低精白の酒という選択肢

近年は、あえて削りを抑えた「低精白」の酒も増えています。精米歩合80%や90%といった、食用米に近い削り方の純米酒も見かけるようになりました。2004年の改正より前は、純米酒を名乗るには精米歩合70%以下が条件だったため、こうした酒は「純米酒」と表示できませんでした。条件がなくなったことで、低精白の純米酒という選択肢がはっきり見えるようになったともいえます。

低精白の酒には、次のような魅力があります。

  • 米そのものの旨味や、穀物らしい香ばしさを感じやすい
  • 酸と旨味がしっかりしていて、燗にすると味がふくらみやすい
  • 熟成させたときに、味わいに奥行きが出やすい

削る量が少ないぶん、原料の米を無駄なく使えるのも特徴です。精米や醸造の技術が進んだことで、削りを抑えてもきれいに仕上がる酒が造れるようになり、米の個性を表す手段として取り組む蔵も出てきています。

ラベルの数字の読み方

精米歩合を見るときは、次くらいの目安で十分です。

  • 50%以下:香りが華やかで、軽やかな味わいを狙った酒が多い
  • 60〜70%前後:香りと味のバランスをとった酒が多く、食事にも合わせやすい
  • 70%を超える:米の旨味やコクを生かした造りの酒が多い

もちろん例外はいくらでもあります。気になる数字の酒を2〜3本選び、同じ温度で飲み比べてみると、精米歩合が味にどう表れるのか、あるいは思ったほど表れないのかを、自分の舌で確かめられます。

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