日本酒イベントの歩き方 — 初参加で失敗しないために
酔談部 編集部

大きな試飲会は、準備なしで行くと途中で味が分からなくなりがちです。イベントの種類、事前に決めておくこと、会場での回り方とマナー、帰り道までを、初めての人向けに順を追って整理します。
日本酒イベントにはいくつかの型がある
ひとくちに日本酒イベントといっても、形式はさまざまです。行こうとしているのがどの型かを知っておくと、準備の仕方が決まります。
- 大規模な試飲会:ホールなどに数十の蔵がブースを並べる。入場料を払い、受付で渡されたお猪口で各ブースを回る形式が多い
- 蔵開き:酒蔵が敷地を開放し、新酒の試飲や蔵の見学ができる。冬の終わりから春にかけて行う蔵が多い
- 酒まつり:酒どころの町全体が会場になり、いくつもの蔵や屋台を歩いて回る
- 酒販店・飲食店の試飲会:少人数で、店主や蔵の人の話を聞きながら飲める
- セミナー・ペアリング会:テーマに沿って説明を聞き、料理と合わせる。定員制が多い
新潟の「にいがた酒の陣」や広島・西条の「酒まつり」のように、地域をあげて開かれる大きな催しもあります。また、10月1日の「日本酒の日」の前後には、各地で関連する催しが開かれることがあります。規模が大きいほど人も多くなるので、以下の準備が役に立ちます。
初めてなら、いきなり大規模な会場に行くより、酒販店の小さな試飲会から始めるのもひとつの方法です。人が少ないぶん落ち着いて味わえ、分からないことをその場で質問しやすいので、自分の好みを知る足がかりになります。
事前に決めておくこと
チケットと条件を確かめる
人気のイベントは前売り券が早くなくなったり、時間帯ごとの入れ替え制になっていたりします。公式の案内で、入場料に試飲がどこまで含まれるのか、お猪口は配られるのか持参なのか、年齢確認のための身分証が必要かどうかを確認しておきましょう。
テーマをひとつ決める
出店が数十蔵にのぼる会場で、すべてのブースを回るのは現実的ではありません。「今日は生酛・山廃を中心に」「行ったことのない県の蔵を5つ」「気になっていた銘柄を3つ確かめる」のように軸をひとつ決めておくと、あとで振り返ったときに記憶に残りやすくなります。出店リストが事前に公開されていれば、目当ての蔵に印をつけておきます。
飲む順番の目安
味の感じ方は、直前に飲んだ酒に引っぱられます。次の流れを意識すると、最後まで違いが分かりやすくなります。
もちろん会場の混み具合で順番は崩れるので、ざっくりした目安で構いません。
服装と持ち物
片手にお猪口を持つと、もう片方の手しか使えません。荷物は肩掛けのバッグなどにまとめ、手をなるべく空けておくのがおすすめです。立ったまま長く歩くことになるので、靴は歩きやすいものを選びます。
- メモ帳とペン、またはスマートフォン
- ハンカチやティッシュ
- 買った酒を持ち帰るためのバッグ(配送を頼めるかも確認しておく)
会場での歩き方
和らぎ水をこまめに
日本酒の合間に飲む水を和らぎ水(やわらぎみず)と呼びます。酒と同じくらいの量の水を挟むつもりで飲むと、口の中がリセットされ、次の酒の味が分かりやすくなります。酔いのペースをゆるやかにするうえでも役立ちます。給水所の場所は、入場したらまず確かめておきましょう。また、空腹のまま飲み始めると酔いが早く回りやすいので、会場に入る前に軽く食べておくと安心です。
少量ずつ、ときには残す
試飲の一杯はごく少量ですが、数が重なるとかなりの量になります。すべてを飲み干す必要はありません。会場によっては残った酒を捨てる容器が用意されているので、上手に使いましょう。利き酒の場では、口に含んで味を確かめてから吐き出すのも、失礼なふるまいではありません。
お猪口で色と香りを見る
試飲会では、底に青い輪が描かれた蛇の目の利き猪口が使われることがあります。白い部分で酒の色合いを、青い輪との境目で透明感や輝きを見やすくするための工夫です。注いでもらったら、まず色を見て、香りをかぎ、それから口に含む。この順番を意識するだけで、一杯から受け取れる情報が増えます。

ブースでのふるまい
ブースでは蔵の人が直接注いでくれることが多く、話を聞ける貴重な機会です。一方で、人気のブースには列ができます。後ろに人が待っているときは質問をひとつかふたつに絞り、ゆっくり話したいときは空いている時間帯に戻ってくるとよいでしょう。瓶を自分で手に取って注ぐのは、すすめられたときだけにします。
時間配分を考える
会場にいられる時間は意外に短いものです。入場したら、まず目当てのブースをいくつか先に回り、そのあとで気になった蔵をのぞく、という順にすると取りこぼしが減ります。開場直後は入り口近くのブースに人が集まりやすいので、奥の列から回るほうが落ち着いて試せることもあります。
途中で「どれを飲んでも同じように感じる」と思ったら、舌も頭も疲れてきた合図です。いったん会場の外に出たり、水を飲みながら座って休んだりして、ひと息入れてから再開しましょう。無理に数をこなすより、印象に残る数杯に出会えるほうが、あとで思い返したときに満足度が高くなります。
メモは一言でいい
記録は長い感想より、「銘柄名・種類・一言」くらいのほうが続きます。「○○ 純米吟醸 — 香り控えめ、後味すっきり、燗でも試したい」程度で十分です。ラベルを写真に撮っておくと、あとで探すときに役立ちます。撮る前にブースで一言ことわると丁寧です。
屋外の酒まつりで気をつけたいこと
町を歩いて回る酒まつりでは、移動の距離が長くなり、天気の影響も受けます。日差しや寒さへの備えをし、暑い日は特に水をしっかり飲みましょう。トイレや休憩できる場所を最初に確認しておくと、混雑しても慌てずに済みます。

買って帰る・帰り道
会場で気に入った酒を買えることも多いですが、瓶は重く、割れる心配もあります。配送を受け付けているかを確かめるか、銘柄名をメモしておいて、後日酒販店や通販で探すのも現実的な方法です。
そして何より、帰りは公共交通機関を使い、車や自転車は運転しないでください。翌日に予定があるときは、早めに切り上げる判断も大切です。なお、20歳未満の方は飲酒できません。
気に入った蔵は、次の楽しみの入り口
イベントの大きな収穫は、好みに合う酒や、話を聞いてみたい造り手に出会えることです。気に入った蔵が見つかったら、その蔵の蔵開きや見学に足を運んだり、別の銘柄を飲んでみたりと、楽しみ方がつながっていきます。一度で全部を知ろうとせず、何度か通ううちに自分なりの歩き方が見えてくるはずです。